皮膚の難病の根治法確立 北大大学院など世界初 患者の細胞培養し移植/近く保険診療開始

皮膚の難病の根治法確立 北大大学院など世界初 患者の細胞培養し移植/近く保険診療開始
2019年5月8日 (水)配信北海道新聞

 北大大学院医学研究院の研究班などが、対症療法しかなかった遺伝性の皮膚の難病「表皮水疱(すいほう)症」に対し、患者自身の皮膚を培養し移植する再生医療による新たな治療法を開発した。医師主導による治験で同症の根本的な治療法を世界で初めて確立した。既に厚生労働省の承認を受け、保険診療が近く始まる見通しだ。
 研究班は皮膚科学教室の松村若菜医員、市立札幌病院皮膚科の藤田靖幸副医長(3月まで北大大学院講師)。治験結果などをまとめた研究論文が2日、米国研究皮膚科学会雑誌のオンライン版に掲載された。
 表皮水疱症は、わずかな刺激で全身の皮膚のめくれやただれ、水ぶくれが繰り返し起きる。2人は成人患者の一部に、その症状が起きない正常な皮膚があることに着目。原因となる先天的な遺伝子異常がいつの間にか自然に修復される「復帰変異モザイク」という現象によるもので、モザイク部分の皮膚の遺伝子も正常に戻っている。
 新たな治療法は、自然修復された正常遺伝子の皮膚細胞を採取し、特殊な培養液で約4週間増殖させてシート状の表皮を作り、患者自身の傷ついた部分に移植する。2016年に道内の患者3人に治験を行った結果、半年後に2人は100%改善、残る1人も60%改善し、正常な皮膚が作られていた。自身の細胞のため拒絶反応はなく、移植の副作用もなかった。
 治験用の培養表皮シートは、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(愛知県)が製造。重症やけどなどの治療では既に保険適用されている。同社は北大の治験結果などを基に昨年3月、治療対象を表皮水疱症にも拡大するよう厚労省に申請し、同12月に承認され、近く保険点数が決まる。
 研究班は「復帰変異モザイクがある患者に限られ、全身を一気に治せるものではないが、皮膚や傷の改善、感染症やがん化の防止、疼痛(とうつう)の軽減につながる。大きな一歩だ」としている。
■希望持てる第一歩
 全国の患者や家族でつくる「表皮水疱症友の会 DebRA Japan(デブラ ジャパン)」の宮本恵子代表理事(64)=札幌市=の話 傷が繰り返しできるので、患者は1日に何度もガーゼを交換し、皮膚をより良い状態に保つしかない。やけど治療用の培養表皮シートを私たちの病気にも使えないかと以前から希望してきた。患者が希望を持てる治療の第一歩になったと感じている。
 <ことば>表皮水疱症 生まれつき皮膚が弱い遺伝性の難病。皮膚の各層をつなぎとめるタンパク質に先天的に異常があるために起こる。重症になると、指の癒着、内臓疾患、感染症、皮膚がんなどになる。国内患者は推定で500~640人。北大病院は2015年、同症の専門外来を日本で初めて開設した。